自動二輪免許:深堀り解説(伊達・福島)
2023年10月22日
自動二輪許は「バイクに乗るための許可証」です。
当たり前と思われるかも知れませんが、バイクも四輪車同様に車両区分があり、その区分により運転可能な免許も異なります。
免許は大きく普通二輪、大型二輪、原付の三つに分かれており、普通二輪の中には『小型限定』の免許が含まれます。
自動二輪運転免許は「道路交通法」による区分ですが、車両としての二輪車の区分は、この「道路交通法」の他、車両の技術基準について規定された「道路運送車両法」による物の二つが同時に存在します。
車両区分に用いられ、【cc】の単位で表記される『排気量』ですが、これはエンジンの燃焼用シリンダー容積の合計値で、大まかに言うと『エンジンが吸い込むことができる燃料と空気の量』になります。
排気量が大きくなるほど加速力が増し、車体が大型化して、燃料当たりの走行距離が短くなる傾向にあります。
●道路交通法による区分
二輪車は以下の3つに区分されます。
・「原動機付自転車(原付)」→50cc以下
・「普通自動二輪車(普通二輪)」→50cc超から400cc
※このうち、50cc超から125cc以下が『小型二輪』になります。
・「大型自動二輪車(大型二輪)」→400cc超
運転免許の種類も、この区分に従って分けられています。
●道路運送車両法による区分
道路運送車両法では、車両を以下の4つに区分しています。
・「第一種原動機付自転車」→50cc以下
・「第二種原動機付自転車」→50cc超から125cc以下
・「二輪の軽自動車(軽二輪)」→125cc超から250cc以下
・「二輪の小型自動車(小型二輪)」→250cc超
※この他、側車付きのモノ(サイドカー)は排気量相当の二輪免許で運転が可能ですが、三輪バイク(トライク)は普通車免許が必要になります。違反行為とならないよう、特殊な二輪車は警察や販売店で運転に必要な免許を確認するようにしましょう。
最近は各種メディアで『小型二輪』や『原付二種』といった表記を見る事も多くなりましたが、乗りたいバイクは道交法に基づく区分から運転に必要な免許を見定めてください。
四輪車と同様、自動二輪にもMTとATがありますが、「運転免許統計」で免許取得者数を見ると、二輪では圧倒的にMTが主流という特徴があります。
一方でこれを小型二輪に絞って見ると、こちらは需要の半数以上をATが占めるという逆転の現象が生じています。
この興味深い現象は、近年のバイクが趣味に特化した乗り物になりつつあることが要因に挙げられます。
かつては安価な移動手段だった自動二輪も、今ではその立場を軽自動車や電動アシスト自転車に譲り、ツーリングやカスタムバイクなどのホビー需要に拠って立っているという事ですね。
そんな中でも、まだまだ日常の足として確固たる地位を維持し続けてきた原付や小型二輪ですが、現在は小型二輪でもホビー需要が高まっており、二輪は走りを楽しむもの、人生を豊かにするもの、という認識が拡まっているようです。
次に「普通二輪」と「大型二輪」の主要カテゴリーについて、免許取得の方法から解説します。
【二輪免許の種類と取得条件】
〈普通二輪〉(小型二輪も同様)
・運転できる車両:排気量50cc以上、400cc以下
・年齢条件:16歳以上
・視力条件:両眼で0.7以上、片眼で0.3以上(眼鏡、コンタクトレンズ使用でも可)
・色別:赤、青、黄の識別がはっきりできる方
〈大型二輪〉
・運転できる車両:排気量400cc以上
・年齢条件:18歳以上
・色別:赤、青、黄の識別がはっきりできる方
〈教習時限の詳細〉
・普通二輪
1. 所持免許無しから取得する場合
- 技能教習 : 1段階9時限 ・ 2段階10時限 → 19時限
- 学科教習 : 26時限
- 合計 : 45時限
2. 普通自動車免許所持者の場合
- 技能教習 : 1段階9時限・2段階8時限 →17時限
- 学科教習 : 1時限(二輪運転時の危険予測に関する教習が含まれます)
- 合計 : 18時限
・大型二輪
1. 所持免許無しから取得する場合
- 技能教習 : 1段階16時限 ・ 2段階20時限 → 36時限
- 学科教習 : 26時限
- 合計 : 62時限
2. 普通二輪免許所持者の場合
- 技能教習 : 1段階5時限 ・ 2段階7時限 → 12時限
- 合計 : 12時限
それぞれ普通自動車免許、あるいは普通二輪免許所持から教習を進めた方が、必要教習時限を大幅に短くできます。
特に、大型二輪の教習は時間も費用もかかり、操作自体も難しい事から、普通二輪からステップアップする形が一般的です。
【教習のカリキュラムとその内容】
二輪車の教習はどのような流れで進み、どういった事を学ぶのか。
普通二輪の技能教習をメインにざっくりと説明します。
・入校、適性検査→入校手続きを済ませたら、適正検査を受けて自身の運転適性と傾向を調べます。
二輪車の教習期限は9ヶ月間です。
この間に以下の流れで卒業を目指します。
・第一段階→バイクの起こし方、指定速度での走行、右・左折、停止といった二輪車の基本的な操作を学びます。
二輪車は運転者が露出しているため、事故の際に大きなケガや死亡に繋がる可能性が大きくなる事から、第一段階での基本的内容の習得が非常に重要です。
・みきわめ→第一段階の最後の技能教習で、それまでの教習内容が身についているかを文字通り『みきわめ』られます。
この『みきわめ』に合格することで第二段階の教習へ移ります。
・第二段階→一本橋やスラローム、急制動などの実践的な道路走行を意識した内容の教習を行います。
・『みきわめ』から卒業検定→第一段階と同様に、二段階でも『みきわめ』があります。
みきわめに合格すると卒業検定試験が受けられるようになります。
卒業検定は場内コースを既定の経路で走行する技能試験です。
走行の様子は検定が逐次確認し、『持ち点100』から減点方式で実施され、検定修了時に70点以上残っていれば合格になります。
検定試験は予め日程が決まっているので、短期での卒業を目指す場合、目標とする検定日から逆算して教習を進める必要があります。
※みきわめや検定試験に合格できなかったら?
→最低1時限の補修(『補習』ではなく『補修』になります)を受けて、再度みきわめや検定に挑み、合格するまで繰り返します。
卒業検定に合格すると免許センターや最寄りの警察署で免許の書きかえを行い、ライダーとして公道に独り立ちです。
初めて取得する免許が二輪免許の場合、これらに加えて学科教習と、第一段階と第二段階の最後にそれぞれの学科教習効果を図る『効果測定』が加わります。
※二輪教習は路上に出ないの?仮免許は?
→ここまで読まれた普通免許所持者の方、あるいは免許事情に詳しい方は『バイクは教習所の中でしか練習しないの?』と思われた事でしょう。
二輪車の教習は一貫して所内のコースで教習生と指導員が並走、あるいは追走する形で行います。
その為、路上練習に必要な仮免許は二輪教習にはありません。
【免許取得までの費用とその内訳】
・複数回の試験が必要になった場合の追加費用
教習料金は教習所毎に異なるため、確認が必要ですが、基本的にはいずれも『各段階で不合格にならなかった場合の最短時限』を前提として案内されているケースがほとんどです。
教習料金には教本代をはじめとする諸経費が含まれており、その内容も教習所毎に異なるので、必ず内訳も確認するようにしましょう。
補修が生じたり、再検定の場合は当然ながらその分の教習料と『再検定料』が追加になってしまいます。
早く卒業したい方はスピード感だけでなく、毎時の教習を大事にしてください。
【自分自身のスキルセットと習熟度】
・二輪車に乗った経験があるか、初心者か?
当然の事ながら、教習は自分のスキルに応じて、必要な教習時間や回数が変わる可能性があります。
同じことを同じように教わっても進度は人それぞれ、指導員も教習生の方に合わせて、同じ教習項目でも様々なアプローチで臨みますが、最終的には本人の取り組み次第です。
自転車に乗れないとバイクの操作は難しいのでないか、毎日自転車で移動しているならバイクの教習など簡単ではないのか、そういった声も聞かれますが、必ずしもそうとは限りません。
自転車とバイクは同じ二輪でも若干挙動が異なる他、車体の重量自体が比較にならないほど違います。
二輪車に慣れているに越したことはありませんが、自力でペダルを回す走行と、重い車体を相応の速度で操る技能は全く別物です。
心配し過ぎず、侮らず、だれでもスタートラインに変わりは無いと思って臨みましょう。
二輪は趣味の乗り物と割り切るのなら、先の長い教習で無理をせず、小型二輪や普通二輪などの関連する免許から取得して、より早く『走る楽しさ』を求めていくのがおススメです。
【二輪車免許でライフスタイルをより豊かに】
効率重視で日々が目まぐるしく過ぎ行く昨今、時間や目的を問わずバイクに乗る事はそれ自体がレジャーであり、スポーツであり、心身をリフレッシュする手立てにもなる、極めて稀有な行為です。
この資格を取得して多彩な生活をエンジョイしてください。
【追記】:少子高齢化社会における交通問題への提起
少子高齢化が進む社会で、交通弱者の問題が深刻化しています。
労働人口の減少を一因とする公共交通網の縮小により、免許を返納した高齢者が社会から孤立するリスクが高まっているのです。
しかし、全ての運転活動を止めるという選択だけでなく、『下位免許の所有の申し出』を活用すれば、安全性や生活環境に合った範囲での運転が可能です。
例えば、大型車や普通車の免許を返納しつつ、原動機付自転車(原付)の免許を保持することで、一定範囲内の移動手段を確保することができます。
現在ではキャノピー付きの三輪バイクや、より安定性の高い四輪型の原付バイク等、原付免許で運転可能な選択肢が豊富にそろっています。
また、これらの車両は普通車よりも最高速度と維持費が抑えられており、安全性とコストの両面で大きなメリットがあります。
普通免許を返納せずとも、所持車両を50cc以下のミニカー(マイクロカー)や同区分の電気自動車に引き下げる事で、同様に安全性とコストのメリットが享受できます。
※ミニカー(マイクロカー)は道路運送車両法上では原付の区分ですが、道交法上では普通車の区分の為、運転には普通免許が必要です。(道路運送車両法上では原付なので、書庫証明や車検、重量税が不要等のコスト面のメリットは残ります)
これによって、高齢者自身とその家族が負担を感じることなく、安全かつ効率的に近隣を移動する手段を確保できます。
これは高齢者の社会参加と生活品質の維持、さらには交通安全にも寄与するものです。
この選択肢を広く社会に知ってもらい、活用してもらうことが、持続可能な交通社会を形成する一歩となるでしょう。
高齢者一人一人の状況に柔軟に対応しながら、安全かつ便利な生活をサポートする道はまだ広がっています。
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